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Channel: ジャックの談話室
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マシュー・ボーンの「白鳥の湖」

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公開:2012年製作国:イギリス演出・振付:マシュー・ボーン出演:リチャード・ウィンザードミニク・ノースニーナ・ゴールドマン

本作は、1995年に英国のサドラーズ・ウェルズ劇場で初演されて、ダンス界に大旋風をもたらしたマシュー・ボーン版「白鳥の湖」を3Dデジタルで映像化したものです。
このマシュー・ボーン版の「白鳥の湖」が従来の「白鳥の湖」と大きく異なるのは、舞台を現代に移し、主役の白鳥を女性ではなく、男性ダンサーに演じさせたところです。
その結果、白鳥は従来の優美で繊細な白鳥から、攻撃的で猛々しい雄の白鳥になり、ラストの主役の白鳥に仲間の白鳥の群れが襲い掛かるシーンなど、まさに猛禽類といった感じになっています。
オリジナルの「白鳥の湖」は、王子と呪いによって白鳥の姿に変えられたオデット姫の恋物語ですが、
このマシュー・ボーン版は、白鳥を男性ダンサーに演じさせたことで、必然的に同性愛的な要素が加わっています。
ヨーロッパのある国の王子は、母親の王妃と共に亡き父である国王の代わりに国事をこなしていますが、母親である王妃に十分に愛されていないと感じて孤独な毎日を過ごしています。
そんな王子をみかねた侍従が王子に若い娘を引き合わせます。
彼女は下品でマナーが悪いので王妃から嫌われますが、王子は彼女のことが好きになります。
しかし、ある晩、場末のバーにお忍びで出かけた王子は、そこで侍従が若い娘に金を渡している光景を目撃し、彼女が侍従に金で雇われた女性であることを知ってショックを受けます。
酔っぱらってバーの客と喧嘩してバーを追い出された王子は、深夜の公園に迷い込み、公園の池で白鳥の群れに出会います。
白鳥の群れの中で一際、雄々しい白鳥がいて、王子はその白鳥に魅了され、白鳥と王子は素晴らしい一夜を共にします。
それからしばらく経って、王宮で舞踏会が開催されたとき、ひとりのよそ者が舞踏会に紛れ込んできます。
黒づくめの服を着たセクシーな彼は、舞踏会に来ていた女性たちと次々に踊り、彼女たちを誘惑します。
その光景をみていた王子は、その男があの夜、公園で出会った白鳥に違いないと確信し、彼に近づくのですが、男は冷たく王子を拒絶し、
自分に言い寄ってきた王子がホモであると周囲の人間に吹聴し、万座の中で王子に恥をかかせます。
彼は白鳥(ホモ)ではなく、黒鳥(ホモ嫌い)だったのです。
そしてあろうことか、彼は王子の母親である王妃を誘惑して、王妃と一緒にダンスを踊り始めます。
それをみた王子は逆上してピストルを取り出し。。。
という風にストーリーは展開するのですが、
王子が白鳥の群れと出会う夜の公園のシーンは、ホモのハッテン場を連想させますし、舞踏会でよそ者である男が王子を嘲笑するシーンは、ノンケによるホモにたいするイジメを連想させます。
ラストの王子と愛し合う白鳥が、ほかの白鳥たちの攻撃から王子を守ろうとするシーンは、同性愛というよりも父性的な愛情を感じさせますが。
解釈は観る人によって異なるでしょうが、マシュー・ボーンは、このバレエを単なる「白鳥の湖」のパロディーではない、それ自体、非常に完成度が高い、堂々たる作品に仕上げています。
特に男性ダンサーたちが演じる白鳥の群舞は、迫力満点で、白鳥と王子の男同士のダンスシーンも大変、魅力的です。
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マシュー・ボーン版「白鳥の湖」予告編https://www.youtube.com/watch?v=qprzab7Sj_E
マシュー・ボーン版「白鳥の湖」本編https://www.youtube.com/watch?v=rQsECoq9XGM
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セクシーな白鳥/黒鳥を演じたリチャード・ウィンザー

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