最近、アフリカで中国の存在感が増しています。
私が2015年12月に訪れたエチオピアでは、同年9月に中国企業の協力によって、首都のアディスアベバで、ブラックアフリカ初の都市型鉄道、アディスアベバ・ライトレールが開通しています。
2016年10月には、メンテナンス不足によって殆どの区間が使用不能になっていたアディスアベバとジブチを結ぶ、全長781kmのジプチ・エチオピア鉄道の大規模修復・電化工事が中国企業の手によって完成し、
これまで100パーセント道路輸送に頼っていたジブチ・アディス間の貨物輸送が鉄道を利用して行えるようになったそうです。
中国がアフリカに建設した鉄道としては、1976年に開通したタンザニアの首都、ダルエスサラームとザンビアのカピリムポシを結ぶ、全長1860キロのタンザン鉄道が有名ですが、
2016年にはアンゴラのロビトとルアウを結ぶ全長1344kmのベンゲラ鉄道が中国企業の手によって開通し、将来的にはタンザン鉄道に接続するといいます。
さらにナイジェリアの首都、アブジャと北部の都市、カドゥナを結ぶ全長186.5kmの鉄道が2016年7月に中国企業の手によって開通、
ケニアでは、モンバサ・ナイロビ間の老朽化した路線の改良工事が中国の支援によって実施中だそうです。
中国企業は、鉄道だけでなく、自動車用道路もアフリカ各地で建設しているといいます。
日本政府は中国に対抗するために2016年7月に第6回アフリカ開発会議(TICAD)をケニアのナイロビで開催し、安倍晋三首相が出席して、日本の支援プロジェクトは「量より質」であるとPRしたそうですが、
少々、工事が雑であっても、中国から大量の中国人労働者を連れてきて、猛スピードで道路や鉄道を建設してしまう中国式の「質より量」のプロジェクトの方がアフリカのような後進地域には向いているような気もします。
いずれにせよ、アフリカ進出に関しては、日本は中国に大きく遅れをとっています。
たとえば、現在、駐日ベナン大使になっているゾマホンは、親日家として知られていますが、彼は日本に留学する前に中国に留学しています。
中国の大学で勉強したあと来日したそうですが、中国では国費留学生だったのに、日本には私費留学生として来たそうです。
それだけ日本政府はアフリカの留学生に無関心だったということで、現在でもその状況は大して変わっていないのではないでしょうか。
ゾマホンは故国、ベナンに「たけし日本語学校」という日本語学校を私費で建設したそうですが、ベナンには中国政府によって孔子学院という中国語や中国文化を教える教育機関が設置されています。
孔子学院は、イギリスのブリティッシュ・カウンシル、フランスのアリアンス・フランセーズ、ドイツのゲーテ・インスティチュートなどヨーロッパ諸国が運営する国際交流機関を模して創設されたそうですが、
中国語や中国文化の普及、宣伝に加えて、諜報機関としても活動しているといわれています。
孔子学院は現在、世界各地に480校以上、アフリカ大陸には40校以上、設立されていて、多くのアフリカの若者が中国語を学んでいるといいます。
たとえば、孔子学院が併設されているエチオピアのアディスアベバ大学では、学生の間で、中国語は英語に次ぐ第二外国語になっているそうです。
エチオピアに中国企業が数多く進出していて、中国語を話せると就職に有利になるというのがその理由だそうですが、
実際、2015年12月に私がエチオピアを旅行したときも、最近は世界中どこに行ってもみかける中国人観光客の姿こそなかったものの、仕事で来ている中国人は多く、
エチオピア南部のジンカのような辺鄙な町でも、ホテルのレストランで地元のエチオピア人と商談する中国人の姿を何度かみかけました。
中国人が多いのはエチオピアだけではなく、南アフリカ共和国には35万人も中国人が住んでいるそうです。
南ア共和国に住む日本人は1500人ほどだそうで、数では完全に中国人に負けています。
日本人の場合、企業の駐在員が多数を占めると思われますが、彼らは任期が終わるとさっさと日本に帰国します。
一方、中国人は南アに永住するケースが多く、まず単身赴任してビジネスが軌道に乗ると中国から家族を呼び寄せ、さらにビジネスの拡大に合わせて一族郎党を呼び寄せるというふうに増殖していくそうです。
現在、アフリカ全土で100万人以上の中国人が暮らしていて、中国政府は将来的に2億人から3億人の移民をアフリカに送り込む計画だといいます。
2016年時点でアフリカの総人口は12億人弱、2050年には21億人を超えると予測されていますが、このまま行くとその1割以上を中国人が占めることになるというのです!
これはどういうことかというと、アフリカが東南アジア化するということです。
東南アジアには華僑が多く住み、経済の実権を握っていますが、アフリカもそうなることが予想されるのです。
私はこれは一概に悪いことだとは考えていません。東南アジア諸国がまがりなりにも近代国家の体裁を保っていられるのは華僑がいるからで、なんだかんだいいながら中国人は優秀なのです。
実は東アフリカには、アフリカにおける華僑の先輩ともいうべき印僑が多数、住んでいます。
彼らはイギリスが植民地時代にウガンダ鉄道を建設したときにインドから連れてきた労働者の子孫で、
インド人労働者は、鉄道の建設工事が終わったあとも東アフリカに留まって商売を始め、やがて東アフリカ経済を牛耳るようになったのです。
1970年代初め、ウガンダの独裁者のアミン大統領は、現地住民から嫌われていたウガンダ国内のインド人を国外に追放しますが、
その結果、ウガンダ経済は疲弊し、アミン失脚後にウガンダ政府は追放したインド人を呼び戻しています。
東南アジアでもベトナム戦争に勝利して南べトナムを占領・支配下に置いた北ベトナムは、サイゴンのショロン地区に住む華僑をボートピープルにして追い出しましたが、
やはり経済が低迷して、ドイモイ政策で追い出した中国人を呼び戻しています。
アフリカの大半の植民地は1960年以後に独立するのですが、独立後はどの国でも独裁者による支配が続き、内戦の勃発や民族紛争の激化、民族虐殺の発生、貧困の増大、
飢餓のまん延、エイズの大流行など、ロクなことは起こらず、アフリカの独立は早すぎたのではないかという意見が欧米の識者から出てくるほどでした。
欧米諸国は、アフリカ諸国の独立後も膨大な額の人道援助を行うのですが、腐敗した政治家や官僚の私腹を肥やしただけで、貧困は解消するどころか、拡大しました。
その結果、欧米諸国の間でアフリカにたいする援助疲れの傾向が出てきたのですが、その間隙を縫ってアフリカに進出してきたのが中国です。
中国は、欧米諸国とは異なり、援助に際して国内の人権状況の改善をうるさく要求してこないし、
アフリカ諸国の資源を獲得する見返りに道路や鉄道などの社会インフラの整備を積極的に行うという、そのビジネスライクな姿勢がアフリカの支配層から好感をもって迎えられているといいます。
そのため、私はアフリカは将来、東南アジア化すると予測しているのですが、東南アジアの場合と同様、現地住民との摩擦や衝突が局所的に起こることは予想されるものの、
総体的にいって、中国人はアフリカの発展に貢献できるのではないかと私は考えています。
関連記事:「援助じゃアフリカは発展しない」