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追悼 原節子

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往年の日本映画の大スタア、原節子さんの訃報が飛び込んできました。

享年95歳、大往生といえるかもしれませんが、100歳を超えた長姉、100歳近い次姉がまだ存命だそうで、それを考えるともっと長生きをしてもよかったのではないかという気がします。

亡くなったのは9月5日だったそうで、一か月ほど前に病院に入院したというニュースが流れたのですが、そのときはもう亡くなっていたことになります。

死亡の発表が遅れたのは「騒がれたくない」という本人の遺志を尊重した結果だそうで、最後まで自分の生き方を貫いたといえるでしょう。

彼女のことは以前、このブログで取り上げたことがあるのですが、今回の追悼記事では、もう語り尽くされた感がある小津監督の作品ではなく、

小津作品以外で彼女が演じた役を回想して日本映画史上最大のスタア女優を偲んでみたいと思います。


小津作品以外で彼女がよく出演していたのは、成瀬巳喜男の作品です。

『めし』(1951)、『山の音』 (1954)、『驟雨』 (1956)、『娘・妻・母』 (1960)の4本の作品に出演していますが、個人的には『めし』と『驟雨』が好きです。

二本とも安サラリーマンの夫をもつ生活に疲れた妻の役ですが、一見すると華やかな美貌を持つ彼女には似つかわしくない役どころのように思えるのですが、両方の役ともごく自然体で演じていてまったく違和感がありません。

『驟雨』では、家の近所を通りかかった焼き芋屋を呼びとめて、「おじさん、焼き芋、二十円ちょうだい」といって焼き芋を買うシーンがあって、原節子に焼き芋を買わせるなんて、成瀬巳喜男はひどいことすると思ったのですが、

やはり美人女優の高峰三枝子が主演した『妻』(1953)では、妻役の高峰三枝子が下宿人の若い男の三国廉太郎を前にして、食後、つまようじで歯の間を掃除して、

お茶を口に含んでぐちゅぐちゅと音を立てて口の中をすすぎ、そのままごっくんと飲みほすという行儀の悪いことをさせていますから(これを堂々とやってのけた高峰三枝子は大した女優です!)、

焼き芋を買わせるくらい成瀬監督にしてみたら朝飯前だったのかもしれません。

成瀬巳喜男は、元々は小津安二郎のいる松竹で監督をしていたのですが、小津と作風が似ていたことから、松竹の城戸四郎社長に「小津は二人はいらない」といわれて、松竹を追い出されて東宝に移ったという経緯があります。

小津と成瀬は市井に生きる庶民の哀歓を好んで描いたところは似ていますが、小津は女性を男の視線で視ていたのに対し、成瀬は男でありながら女性を女の視線で視ていたという違いがあります。

つまり、小津映画では女性は客体だけれど、成瀬映画では女性は主体だったわけで、だからこそ成瀬は「女性映画の巨匠」と呼ばれたのです。

小津も名監督の誉れが高いけれど、女性映画の巨匠とは言われませんからね。

小津作品では俳優は小津好みの「形」にはめられることが多いのですが(それはそれで悪くはないのですが)、

成瀬作品では原節子は小津作品のときよりも肩の力を抜いて自然に演技している印象があって、それが新鮮でかつ好ましく感じられました。

この二本の成瀬作品の原節子は、本来の彼女のイメージとは異なる役でしたが、それでは彼女のイメージに合った役はなにかというと、華族の令嬢あるいは奥方といったところでしょう。

実際、彼女は戦後、『安城家の舞踏会』(1947)、『お嬢さん乾杯!』(1949)で華族の令嬢を演じ、『大番シリーズ』(1957~1958)では華族の夫人を演じています。

ただし、すべて戦後、没落した華族の令嬢あるいは夫人の役で、この中では『大番』で彼女が演じた華族夫人の役が一番、印象に残っています。

『大番』は、兜町で勇名を馳せた実在の相場師をモデルに描いた獅子文六の小説を映画化したもので、主人公の株屋の「ギューちゃん」の役を加東大介が演じ、

『大番』(1957)、『続大番 風雲篇』(1957)、『続々大番 怒涛篇』(1957)、『大番 完結篇』(1958)の4本が製作された人気シリーズだったのですが、原節子は4本すべてに出演しています。

あらすじは四国の宇和島の水飲み百姓の倅のギューちゃんが何を血迷ったのか、島一番の名家のお嬢様(原節子)にラブレターを出すというトンデモない事件を起こし、

それが原因でギューちゃんは、追われるようにして島を離れて東京に出て、ある株屋の給仕として雇われます。

偶然、株の世界に飛び込んだギューちゃんでしたが、やがて相場師としてめきめき頭角を現すようになります。

一方、原節子のお嬢さまは、華族の軍人と結婚して、やはり東京に住むようになります。

ギューちゃんは、一度、故郷の宇和島に帰ったとき、今は華族の奥様になっているかってのお嬢様の父親に頼まれて、東京のお嬢様のところに物を届けに行きます。

広壮な邸宅に住むお嬢さまは届け物をしにきたギューちゃんに「ご苦労様」といって「粗品」と書かれた小さな紙箱を渡します。

紙箱には靴下が入っていて、ギューちゃんは、その安物の靴下を宝物のように大切にして同棲相手のおまきさん(淡島千景)に焼きもちを焼かれます。

ただギューちゃんがいくらお嬢様に憧れていても、華族の奥方になっているお嬢様は、身分の低いギューちゃんを出入りの商人くらいにしか思っていません。

ギューちゃんは株で稼いでいたのですが、昔の日本では株屋はやくさと同じ賤業とみられていて、まともな家では娘を株屋とは絶対、結婚させなかったといわれるくらいで、ギューちゃんの片思いはまったく通じなかったのです。

しかし、戦後、二人の立場は逆転します。お嬢様の軍人の夫は戦死し、未亡人になったお嬢様は生活に困窮し、東京の邸宅を売り払って、

かって別荘として使っていた葉山の別宅に古くからいる女中と二人だけで逼塞して暮らすようになります。

一方、戦後、株で大儲けしたギューちゃんは、食料や生活用品を次から次へと買って、現在は未亡人になっているお嬢様の葉山の別荘に運びます。

かっては目もくれなかった卑しい身分の男の善意に甘えて生きていかなければならない境遇に陥った屈辱をぐっと堪えて、ギューちゃんに礼をいう場面の原節子の演技は素晴らしかったです。

その後、ギューちゃんはますます調子に乗り、未亡人のお嬢様に結婚を申し込むのですが、お嬢様は明確な返事をせず、そのまま寝込んでしまいます。

お嬢様は軽い結核を患っていて、きちんと療養すれば治ると医者がいっていたにもかかわらず、彼女はわざと病状が悪化するように不摂生して、最後は死んでしまうのです。

「株屋風情と結婚するくらいなら、死んだ方がマシ!」

という彼女の強烈な拒絶を前にしてギューちゃんは「この世には金で買えないものがある」という人生の真実を学ぶのですが、ホリエモンあたりに見せてやりたい映画です(笑)

ほかにも紹介したい作品は多いのですが、長くなりますのでこのへんでやめておきます。

ただひとつ言えるのは、もし原節子がいなかったら、日本映画は随分とツマらなくなっていただろうということです。

彼女は全盛期の日本映画を支え、映画がテレビとの競争に負けて急速に衰退し始めた1962年にひっそりと映画界から去っていったのです。

話は変わりますが、原節子は白人の血が混じっているかどうかという論争が長く続いていました。

私は、あのバタ臭い顔からみて、彼女には白人の血が混じっていたと思います。

彼女が出演した『青い山脈』(1949)を監督した今井正は、まじかに見る彼女はとても白人っぽかったと語っていますし、彼女のお姉さんは彼女よりももっと白人っぽい顔立ちをしていたという話もあります。

彼女のお父さんは伊豆の下田の出だそうで、唐人お吉ではないけれど、日本で初めて外国船の寄港を受け入れた下田の港には西洋人が沢山住んでいたそうですから、お父さんが白人との混血であっても不思議はないと思います。

いずれにせよ、たとえ彼女に白人の血が混じっていたとしても、彼女がある時代の理想の日本女性像を体現していた事実に変わりありませんし、

引退後、公の席に一切、姿を見せなかった潔い生き方は非常に日本的というか、サムライ的なものを感じます。

彼女と晩年まで交際があったという女優の司葉子によると、彼女は亡くなる5年くらい前まで小津監督の墓参りをしていたそうで、

今頃は天国で小津監督と再会して、お互い照れくさそうに笑いながら挨拶してるんじゃないでしょうか。


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『めし』(1951)
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『驟雨』 (1956)
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  『大番』


本日のつぶやき

近衛太呂丸 ‏@tarotwo · 6月14日
旧日本軍の慰安婦だったキム・ウェハンさんが11日夜、京畿道広州市内の病院で亡くなった。80歳だった。
http://workingnews.blog117.fc2.com/blog-entry-8387.html …

80歳?
終戦時 10歳以下だぞー!! バカ者っ!

つぶやき2
県職員「同性愛は異常でしょ」と投稿…処分検討

昨今のLGBTゴリ押しに対する反発でこういう意見が出てくると
ゲイリブは待ってましたとばかり騒ぎ立てる。

石川大我は、早速、同性愛を批判した市議のところにいって
辞職を迫ったとか。

これって一種のマッチポンプでしょう。



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