前回のエントリで、上海でホテルを予約していったにも関わらず、宿泊を拒否された体験談を書きましたが、こういうことは中国ではよく起こるみたいで、
「中国人の常識は世界の非常識」の著者である近藤大介氏も同様の経験をしていて、上海のホテルを予約していたのに宿泊を断られた話を書いています。
彼が予約したのは、私が予約したような安ホテルではなく、上海の高級ホテルだったそうですが、それでも予約していったにも関わらず、ホテルの従業員は満室だからと平然と断ったといいます。
多分、自分よりも高い部屋代を支払う別の客が現れたから自分の予約を勝手に取り消したのではないかと、著者は推測していますが、
こういう話を聞くと、中国人は約束とかルールを破って恬として恥じない人種であることがよくわかります。
実際、私のケースでも、ホテルの従業員は、予約を受け取っていながら宿泊を断ることは悪いことだと思っている様子はみじんも感じられなかったし、謝罪の言葉ももちろんありませんでした。
近藤氏によると、自分の都合を常に優先させて、他人の都合を一切顧みない、このような中国人の自己中心的な性格は、上は習近平から下は一介の庶民にいたるまで、すべての中国人に共通していて、
そのような利己的な個人の集合である中国人社会は、必然的に自分以外の人間はたとえ自分の妻であっても潜在的な敵あるいはライバルとみなす人間不信の厳しい弱肉強食の競争社会となり、
他人にたいする思いやりなどもっていたら、とても生き抜いて行けないのだそうです。
近藤氏は、日本人は基本的に性善説で人と接するので、日本社会には「信頼関係のインフラ」というべきものが存在するといいます。
ビジネスマンであれば、名刺交換したあとは、信頼関係の上に立って話ができるし、同じマンションに住む住民であれば、互いに名前や素性を知らなくとも、廊下やエレベータで会えば、自然と挨拶を交わす。
ところが中国人は性悪説で物を考えるので、初対面の人間と接するときは「もしかしたらこの人間は悪人ではないか」と疑ってかかるといいます。
著者が3年間、暮らした北京のマンションの隣室には中国人の老夫婦が住んでいたそうですが、
この老夫婦はエレベーターホールで出くわすたびに著者のことを猜疑心に満ちた目で睨み、何度か挨拶したものの完全に無視されたそうです。
老夫婦は隣人である著者が自分たちの財産を奪ったりする悪人ではないかと警戒して、決して打ち解けようとしなかったというのです。
日本人と中国人は、肌の色が同じ黄色人種で、同じ漢字文化圏で、同じ儒教文化圏で、同じ農耕民族だが、似ているのはそれくらいまでで、あとはほとんど共通点がない。
「一衣帯水」などといって変な同族意識を持つのではなく、「完全な異邦人」として接した方がうまくいくと著者はいいます。
ここ数年、大量の中国人観光客が日本に押し寄せるようになってきていますが、彼らが一様に感心するのが日本の商店やレストランのサービスの良さだそうです。
そりゃまぁ、サービスのサの字もない中国から来たら、日本人の「おもてなし」精神に感動するだろうけど、だからといって他人にたいする思いやりが完全に欠如している中国人が日本式サービスを真似するのは容易ではないでしょう。
日本人がよく使う言い方で、外国ではめったに聞くことのないものに、「あんたに○○されたら、わしが困る」というのがあります。
たとえば、日本では会社を辞めるという部下に上司が「君に辞められたら私が困る」とかいいます。
しかしこのような物言いは中国人にはもちろんのこと、欧米人にも通じないと思いますね。
「あなたが困ろうが困るまいが、私には関係のないことです」で終わってしまうからです。
上の言い方のバリエーションに「あんたに死なれるとわしが困る」というのもあります。
実の親ならともかく他人にこんなこと言われても、中国人も欧米人も「はぁ?」となるだけでしょう。
しかしこのような言い方は日本人にはある程度、効き目があります。
日本人の間ではなにか行動するとき、自分の都合だけでなく、自分の行動によって影響を受ける周囲の人間の都合にも配慮するのが当然であるという共通の理解が存在するからです。
もし自分の都合だけで行動して、周囲に配慮しなかったら、その人間は利己的で自分勝手な人間であると非難されて、村八分にあってしまうでしょう。
このような日本人の他人を思いやる性格は、ときとして行き過ぎてしまい、上司に命じられるまま我慢して長時間労働して過労死してしまうという悲劇が起こったりするのですが、
それでも他人にたいする思いやりのこころは、日本人の美徳であり、強味でもあると思います。
日本人が比較的格差の少ない豊かな社会を築くことができたのも、日本製品が使いやすくて壊れにくいのも、日本の空が青くて空気が綺麗なのも、
街中にゴミが落ちていないのも、公衆トイレが綺麗なのも、水道水を浄水せずにそのまま飲めることも、毒食品が出回っていないのも、すべて根底に日本人の他人に対する配慮や思いやりがあるわけで、
そのような他人にたいする思いやりがなかったらどうなるか、中国の現状を見れば明らかです。