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Channel: ジャックの談話室
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昨日の旅(33)

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☆ エルズルムのハマム体験

わたしたち一行を乗せてテヘランを出発したランドローバーは、一面、白雪に覆われたザグロス山脈を右に見ながら、一路、イラン高原をトルコに向かって走った。

トルコとの国境に近い町、タブリーズを経由して、イラン・トルコ国境に着いたのは早朝で、
トルコの入国管理事務所が閉まっていて、事務所の前で車を停めてしばらく待たなければならなかった。

国境からはノアの箱舟が流れ着いたといわれる双子の富士山みたいなアララット山がよく見えた。

トルコ国境を越えて最初に着いたのがトルコ東端の町、エルズルムだった。

外国人がめずらしいのか、すぐにわたしたちの周囲に人だかりができる。

ユーゴ人のクリスは、自国がかってオスマン帝国の支配下にあったせいかトルコ人が嫌いなようで、「お前ら、あっちに行け!」と怒鳴って、彼らを追い払っていた。

町のレストランでみんなで夕食をとっていたとき、ふと顔を上げたら、窓には黒山の人だかり、みんなわたしたちが食事する様子を観察しているのだ!

なんだか見世物にでもなったような気分だった。

夕食のあと、みんなでトルコ名物の蒸気風呂、ハマムに行った。

ハマムの脱衣所で服を脱いだとき、仲間の連中の白いブリーフの前が真っ黒に汚れているのを見て驚いた。

わたしは旅行の間中、暇をみては下着を洗濯して交換していたが、彼らは一ヶ月も二ヶ月も同じ下着を穿いていたらしい。

わたしがパンツを脱いだとき、みんなの視線がいっせいにわたしの股間に集中したのは恥ずかしかった。

日本人がどのようなモノをもっているのか、みんな興味津々だったようだが、日本男児のイメージを下げてしまったのではないかと今でも気になっている。

服を脱いで裸になるとハマムの従業員が洗いざらしの木綿の布の腰巻と手ぬぐいをくれる。

客は腰巻を腰に巻いて浴室に向かうのだが、浴場に入るときにその腰巻を外して従業員に渡さなければならない。

そして浴室に入ってからは手ぬぐいで股間を隠さなければならない。

熱い蒸気が充満している浴室の真ん中には、大の男が二、三人は寝転べるくらいの広さの円形の大理石の台があって、大理石の表面は蒸気によって熱くなっていて、そこに身体を横たえると全身に熱が伝わってきて気持ちが良い。

運転手役のイギリス人のジョンとジョージがその大理石の台の上に大の字になって寝転んでいたが、白人は股間を隠す習慣がないので大股を開いて寝ていた。

浴室に入ってきたハマムの親父はそれを見て怒り、ぶつぶつ言いながら、彼らの股間に手ぬぐいをかけていた。

しかし、半分眠り込んでいる彼らは股間に手ぬぐいをかけられるのが鬱陶しいのか、すぐに手で払いのけてしまう。

それを見た親父はまた怒り、彼らが払いのけた手ぬぐいを手にとってまた彼らの股間に被せて回るのだが、彼らはまたすぐに手で払いのけてしまう。

それを見た親父がまた怒って、また手ぬぐいをかけ直すということを延々と繰り返しているのを見て笑ってしまった。

聞くところによると、イスラムの教えでは、同性にたいしてであっても、自分の局部をみだりに見せてはならないことになっているという。

そういえばイスラム圏では、公衆トイレで小便器に向かって用を足している男たちは、身体を小便器にぴったりと密着させて、股間のモノを他人の目に触れさせないようにしている。
もっとも例外もあって、同じイスラム圏でも、レバノン人とエジプト人だけはハマムの浴室の中で股間を隠さずに股間のモノをぶらぶらさせて歩いている。
ただ最近は、イスラム世界を覆う保守化の影響か、エジプトでもかってのように素っ裸で浴室に入ることは禁止され、腰巻の着用が義務づけられたり、下着のパンツを穿いて浴室に入る客が増えているという。
あとイスラム教徒の特徴として、陰毛や肛門周りの毛を剃毛する習慣がある。
これは衛生上の理由かららしいが、ハマムで三助のマッサージを受けたあと、局部を剃毛してもらう客が多い。
この局部の剃毛もエジプトあたりでは、かってはほかの客の前でおおっぴらにやっていたが、最近は、腰布やパンツで隠しながら剃っているらしい。

続く

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