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Channel: ジャックの談話室
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昨日の旅(23)

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☆ インドを旅行するということ

デリーでしばらく骨休みをしたあとアグラにいって、インドという巨大なゴミ溜めに落ちている一粒の真珠といった風情のタージ・マハールを見物し、アグラからそのまま鉄道でパキスタンに向かった。

当初は、インドにもっと滞在し、南インドを回る計画だったが、その気はなくなっていた。
カルカッタから始めて2週間ほどインドを旅行しただけで、インドはもう懲り懲りという気分になったのだ。

カルカッタで目撃した凄まじい貧困、インド・ネパールの国境からベナレスまでの鉄道での移動の大変さ、デリーで出会った悪質なタクシー運転手、どれをとってもインドを好きになる理由などなかった。

実際、このときの初インド旅行を後から振り返ると、大変な災難に遭遇して命からがら逃げ出したという心境だった。

現実にインド旅行中になんらかの災難に出会ったわけではないのだが、わたしにとってはインドという国自体が災難のようなもので、インドを旅行すること自体が大変な困難を伴ったのだ。
インドに来るまでは、この世界にインドのような国が存在するとは想像もしていなかったし、
インドを旅行したあとも、インドについて思い出すたびに、もしかしたら自分はインドというこの世には存在しない別の宇宙に迷い込んだのかもしれないと思ったりした。



こんな風にインドの初印象が大変悪かったことから、当然のことながら、またインドを旅行しようなどという気には中々、なれなかった。
それでも、わたしはその10年後にまたインドに行った。
ヨーロッパで仕事をした帰りで、日程に余裕があったので、会社から支給されたパリ・東京間の北回りの航空チケットを南回りのチケットに変更し、ローマ、ボンベイ、バンコクに数日ずつ途中降機しながら帰国する計画を立てたのだ。

仕事帰りで懐に余裕があったことから、ボンベイでは一流ホテルに泊まり、ボンベイからアウランガバードに飛行機で飛んで、アウランガバードを拠点にインドの有名観光地であるアジャンタの壁画とエローラの石窟寺院を見てまわった。

アウランガバードでも一流ホテルのアショカホテルに滞在したが、その結果、分かったのは、インドという国は、金さえ使えば快適に旅行できる国であるということだった。

インド旅行というと貧乏旅行のイメージが強いが、わたしはインドを旅行するときこそ、贅沢を味わうべきだと考えている。

全体的に物価が安いので、少々贅沢しても日本円に換算すると大したことがないし、マハラジャの宮殿を改造した豪華な宮殿ホテルに泊まったり、

各地の一流レストランで食事をして、その土地のグルメを味わうのは、インドならではの楽しみで、インドが貧しいだけの国ではないことがよくわかる。

その後、40代はじめに仕事の面で行き詰まりを感じ、三年間続けて毎年、3週間ほどインドを旅行したことがある。

一年目は、スリランカとコヴァラムビーチのある南インドのケララ州を回り、二年目は、ラージプートのマハラジャたちが建てた豪華な宮殿や城砦が残っているラジャスタン州を回り、三年目はボンベイを起点にぐるっと南インドを一周した。

このときのインド旅行では、若いときのような貧乏旅行ではなく、そこそこ金を遣ったので、快適に旅行することができた。

都市間の移動は、もっぱらエアコン付きの二等寝台列車を利用した。三等のように貧しいインド人の乗客は乗っていないので物を盗られる心配はなく、乗客は英語に堪能な中産階級以上のインド人ばかりだったので、彼らと興味深い会話を楽しむことができた。

訪れた各都市では、インドの国産車、アンバサダーのタクシーをチャーターして、観光地をまわった。タクシーは一日8時間チャーターしても日本円で3000円ほどで済んだ。

各都市に滞在中は、昼食は、その都市の一番の高級ホテルのビュッフェランチに行った。日本円で1500円ほどで一流ホテルのシェフが作る料理を味わうことができるのだ。

ホテルは主として中級ホテルに泊まったが、時々、気分転換でボンベイのタージ・マハールホテルの旧館や映画『007オクトパス』の舞台になったウダイプールの湖上に浮かぶレイク・パレス・ホテルなどの高級ホテルにも泊まった。

この時期の旅行では特に南インドの魅力にハマった。南インドは北インドと較べて生活水準が高く、北にはウジャウジャいる乞食は少なく、人間は人懐っこくて温厚で、素晴らしいヒンズー建築が沢山残っている魅力的なところだった。

インドを旅行してインド嫌いになる人が多いのは、一つには最初に旅行するのがヒンズー教の聖地のベナレスやタージ・マハールがあるアグラなどの北インドが中心になるためではないかと思う。

北インドでは、観光客目当ての乞食が数多くいて、行く先々で付きまとわれるし、乞食以外でも観光客にたかる悪質な自称ガイドや土産物屋の客引きなどにしつこく付きまとわれるので、それでインドが嫌いになる人も多いのではないかと思う。

若いバックパッカーの場合は、インドでの貧乏旅行に特有の不潔さ、不便さ、不快さが加わるので尚更である。

ただインドという国はそんなに簡単に嫌いになってしまうのはもったいない国であるのも事実で、貧乏旅行に徹するのではなく、もう少し金を遣って快適さを求めて旅行をした方がいいと思うのだ。

結局、わたしはこれまで6回くらいインドに行っているが、それでもカルカッタにだけは二度と足を踏み入れていない。

カルカッタでの体験はいまだにわたしの心にトラウマとなって残っていて消えていないし、「カルカッタは行かなければそれに越したことはないところだ」というわたしの印象はいまも変わっていないのだ。

続く

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