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外国人観光客の増加は、日本にとってマイナスか?

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日本政府は近年、外国人観光客を積極的に受け入れているが、このような観光立国化の試みは、短期的には利益になるかもしれないが、
長期的には過去の遺産や自然で稼ぐことに特化した経済構造になることで、強みだった技術力を喪失し、ギリシャやエジプトのような先進国とは言えない国になってしまう可能性が高い、
と主張するブログの記事を読みました。
http://totb.hatenablog.com/entry/2017/08/07/075240
私はこのような見方に反対です。
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上の表によると、2015年の外国人観光客数の国別ランキングの上位10か国は、次のようになります。
1位:フランス(8445万人)2位:米国(7251万人)3位:スペイン(6821万人)4位:中国(5688万人)5位:イタリア(5073万人)6位:トルコ(3947万人)7位:ドイツ(3497万人)8位:英国(3443万人)9位:メキシコ(3209万人)10位:ロシア(3134万人)
このリストを見ればわかるように、米国、中国、ドイツ、英国、フランス、ロシアなど世界の主要国はすべて上位10か国にランクインしています。
上位10か国の内、観光立国と呼べるのは、物価の安さと温暖な気候と美しいビーチリゾートによってヨーロッパ各地の観光客を惹きつけるスペインと同様の理由でアメリカ人観光客を惹きつけるメキシコ、
過去の歴史遺産や文化遺産で観光客を惹きつけるイタリアとトルコの4か国だけです。
つまり、外国人観光客の多い国=国の経済を観光収入に大きく頼っている観光立国とは限らないということです。
上記の表では、日本の外国人観光客数は年間1973万人で16位にランクインしていますが、これは2015年の数字で、2016年は前年比21.8パーセント増の2403万人、
2017年上半期(1月~6月)は前年比 17.4%増の1375 万人で、単純計算すると、2017年の年間観光客数は2750万人になると予想されます。
この数字を上の表にあてはめると、タイに次ぐ12位になりますが、まだ英米仏独中ロと較べると少ないし、政府が2020年の目標にしている4000万人でやっとイタリアに次ぐ6位になります。
日本の国際的競争力からみて、この程度の順位が妥当ではないかと思われますが、
これまでは日本の国力=ブランド価値からいって、日本を訪れる外国人観光客は少なすぎたのです。
上記のブログでは、日本に来る外国人観光客が増加した理由を円安のせいにしてますが、一番の要因は、中国やアセアン諸国で日本のビザの取得要件が緩和されたことです。
元々、中国やアセアン諸国では日本旅行の潜在的需要は高かったのですが、ビザの取得がむつかしく簡単に行ける国ではありませんでした。
それがビザ要件が緩和されて行きやすくなったことで、アジアからの観光客が一挙に増えたのです。
アジア諸国の人々からみて日本は憧れの国です。
日本はアジアで唯一の先進国で、東京や大阪は魅力溢れる大都会だし、地方に行けば美しい景色を見ることができ、その土地の美味しい料理や酒を味わうことができます。
客観的にいって、日本は外国人にとって旅行するのにとても面白い国だし、日本の国益の観点からいっても、多数の外国人観光客を受け入れることは大きなメリットがあると思います。
単に観光収入が増えるという狭義のメリットだけでなく、日本という国の魅力を来日観光客を通して世界にアピールすることは、日本のイメージアップにつながるのです。
2015年の12月に初めて上海に行ったとき、街並みや地下鉄の汚さ、地下鉄や空港職員の不愛想さ、ちゃんと予約して前金まで払っていったにもかかわらず、
部屋がないと言い張って宿泊を断るホテルの従業員の信じられないような無礼な態度に大きなカルチャーショックを受けました。
街に垂れ込める灰色のスモッグも相まって、中国大陸は暗黒大陸であるという印象を強く受けたのでした。
このような暗黒大陸の住人が日本に観光でやってきたときに、私が中国で味わったのと真逆のカルチャーショックを受けるであろうことは想像に難くありません。
スモッグのない澄み切った青空、ごみの落ちていない清潔な街並み、商店やレストランなどサービス業の従業員の愛想よさ、ちゃんと行列を作って並ぶ温和で行儀の良い人々。。。
小日本と呼んで見下してきた国が世界でもトップレベルの先進国であったことを知ったときの衝撃。
同じアジアの国でありながら、中国と日本ではどうしてこれほど違うのだろう?
と疑問が湧いてくる筈です。
毎年500万人を超える中国人が日本にやってきてこのようなカルチャーショックを味わうわけで、その影響は我々日本人が想像する以上に大きいのではないでしょうか。
「和平演変」という言葉があります。
平和的手段を用いて社会主義体制を崩壊させることを指す中国語ですが、毎年、多数の中国人観光客を日本に受け入れて、
言論の自由や表現の自由が保証された民主主義国家である日本の実態を見聞させることは、中国の体制変革を促すひとつの要因になるのではないかと私は思っています。
騒々しくて下品でマナーの悪い中国人観光客が街に溢れているのを見るのは、たしかに気分の良いものではありませんが、
井の中の蛙の阿Qたちに文明を教えてやっていると考えれば、少しは我慢できるのではないでしょうか。
彼らは無料で文明を学んでいるのではなく、爆買いその他の形でちゃんと授業料を払っているのですから。
最近では、教育の効果が現れたのか、中国人観光客のマナーも以前と較べて改善しつつあるような気がします。
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街に溢れる中国人観光客

冒頭のブログの記事に戻りますと、日本政府が外国人観光客の誘致に力を入れることで、日本がギリシャやエジプトのような国になってしまうという主張はまったく説得力がありません。
上記の国別の外国人観光客数のランキング表をみればわかるように、アメリカやフランス、ドイツ、イギリスなどの主要先進国は、
日本よりも遥かに多い外国人観光客を受け入れているにもかかわらず、先進国としての地位を保っています。

観光客の増加が、観光産業以外の産業の衰退につながるという主張には論理的根拠はないのです。

最近、ネットでは日本はそのうちダメになるとか、いやもうすでにダメになっているとか悲観的な意見を頻繁に目にするようになっていますが、
訪日観光客が増えているという日本にとって喜ばしいニュースまで、詭弁を弄して日本衰退論に結び付けるのは、悪質なプロパガンダとしか思えませんね。

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