いわゆるLGBT活動家たちの言動が一般当事者のそれと大きくかい離していることに前々から疑問を感じていたのですが、最近、その理由がなんとなくわかってきたような気がします。
たとえばLGBT活動家たちは、「日本で同性婚の実現を!」と熱心に叫んでいますが、日本で事実上、同性婚の代替手段になっている成人の同性間の養子縁組については触れようとしません。
同性婚を日本で法制化しようと思えば、まず憲法24条を改正し、そのあと各種関連法規を改定する必要が出てくると思うのですが、
実際問題として、同性婚に冷淡な自民党政権下で、これを実現するのは殆ど不可能でしょう。
一方、養子縁組の制度はすでに存在し、比較的簡単に利用できます。
事実、自分から広言しないだけで、この養子縁組制度を利用して家族になっている同性カップルは相当数に上っている筈です。
養子縁組によって親子になれば、遺産相続の問題とか、病気になったときの面会権とか、活動家たちが主張する同性婚ができないことによる問題を殆どクリアできます。
そのため、本当に同性カップルの幸せと権利の獲得を望むのであれば、「こういう選択肢もありますよ」と養子縁組制度を紹介しても構わないと思うのですが、活動家たちは、頑なにそれを拒んでいます。
なぜでしょうか?
養子縁組制度が、現行の家族制度にすっぽり収まってしまうからではないでしょうか。
前回の記事で触れたように、私はここのところLGBT活動家の実体はフェミニストではないかと考えるようになっているのですが、ご存じのように、フェミニストは家族制度というものを敵視しています。
フェミたちは、男女差別や女性の生き辛さの根源に家族制度があるとみなし、家族制度の破壊を目指して日々、活動しているのですが、
その手段として同性婚を推進しているのではないかと思うのです。
フェミニストが主張する夫婦別姓が現行の戸籍制度の破壊を目指しているのと同じです。
国に同性婚を認めさせることは、現行の家族制度を破壊するきっかけになるけど、養子縁組制度は、現行の家族制度に組み込まれているために家族制度の破壊にはつながらない。
だから養子縁組を提案してもしかたない、と考えているのではないでしょうか。
そう考えると、フェミニスト=LGBT活動家は、同性愛者の幸せや権利の獲得のために同性婚の実現を叫んでいるのではなく、
家族制度の破壊という自分たちの目的を実現するために同性愛者を利用しているに過ぎないということになります。
私は現行の家族制度が万能だとは思っていませんが、子育ての観点に立てば、子供は、ひとり親世帯や同性カップルの世帯に育てられるよりも、父親と母親の揃った家庭で育てる方が望ましいと考えています。
そして日本人の大半が私と同様に考えていることは、下の表をみれば明らかです。
その下の「日米の婚外子(非嫡出子)割合」の表をみると、さらに日本の特異性が明らかになります。
第二次大戦が終了した1945年には、日米とも婚外子の割合は5パーセント以下だったのが、その後、アメリカでは婚外子の割合が右肩上がりに伸びていき、2015年には40パーセントに達しています。
一方、日本では戦後一貫して、婚外子の割合は小さいまま推移し、2015年の時点でもわずか2.3パーセントにとどまっているのです。
現在、アメリカでは子供の40パーセントが未婚の母から生まれ、両親が離婚している子供がやはり40パーセントいて、
両親とその間に生まれた子供によって構成されるかって標準とされた家庭は全体の5分の1、20パーセントまで減ってきているそうです。
これらのデータに見られるように、アメリカでは既存の家族制度が崩壊しつつあるのですが、アメリカで長く駐在員生活をおくられた梓弓さんというブロガーは、
アメリカで同性婚が認められたのは、アメリカで男女の結婚の価値が失われてきているからだと主張しています。
「アメリカがやってるからダメ すめらぎいやさか」を参照
実際、上記の表の婚外子の割合の大きい国では、例外なく同性婚が認められていて、婚外子の多さと同性婚合法化の間に相関関係があることがわかります。
保守派は(そしてフェミたちも)、同性婚を導入すると伝統的な家族制度が崩壊すると危惧(フェミの場合は期待)しているようですが、
現実はその反対で、まず婚外子の増加に象徴される伝統的な家族制度の崩壊が先に起こり、そのあとで同性婚が認められるようになったというのです。
この仮説が正しいとすると、婚外子の割合がきわめて小さい日本では、家族制度は、欧米諸国のように崩壊しておらず、それゆえ、同性婚が合法化される可能性きわめて低いということになります。
日本でも最近は離婚が増えて、シングルマザーの家庭が増えているといわれるかもしれません。
実際、下の表をみると日本における母子・父子家庭の割合は確かに増えています。
そしてひとり親世帯の割合は1980-81年の4.9パーセントから2008-09の10.2パーセントまで2倍に伸びているのです。
これは、離婚の増加によるものだと思われますが、それでもまだこの10.2パーセントという数字は、欧米諸国と較べると小さいです。
私のノンケの友人は、
「子供がいなかったら、女房とはとっくに離婚してただろうけど、子供がいるから我慢してる」
といってますが、日本では子供のために離婚を思いとどまる夫婦が多いのではないでしょうか。
また最近、日本では未婚の独身者が増えていて、2015年には生涯未婚率が男性が22.8%、女性が13.3%に達したそうですが、下の表をみればわかるようにこの数字は諸外国と較べて特別、高いわけではありません。
日韓では20代の婚姻率が低いのですが、これは格差社会の出現と関係があるのかもしれません。
それでも下の表を見る限り、一生独身で通すと決めている未婚者は少なく、大半はいつかは結婚したいと考えているようですから、
若者の所得を増やす政策をとれば結婚して子供を作る若者も増えてきて少子化も改善されるのはないでしょうか。
結論として、婚外子の多さや同棲率の高さに象徴されるような伝統的な家庭の崩壊が進んでいる欧米と較べて、日本では両親の揃った伝統的な家庭に価値を置いている人間がまだ多く、それゆえ同性婚が入り込む余地は少ないといえると思います。
フェミ=LGBT活動家は、二言目には「G7先進国の中で唯一同性婚が認められていないのは日本だけだ」といいますが、
これは、G7先進国の中で唯一日本だけが家族制度が崩壊していないということで、日本の治安の良さや犯罪率の低さはそれと無関係ではないと思いますね。
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私的男色論